講談社BOXの『〈物語〉シリーズ』最新長編『接物語』について、公式X(@NISIOISIN_info)などが9月16日に発売日や“語り手”の情報を公表した。発売日は10月16日。語り手はシリーズの主要人物である忍野メメと示されている。
11年前の予告から実現した最新作『接物語』
『〈物語〉シリーズ』の最新長編の発売の情報は公式Xである「西尾維新公式情報(@NISIOISIN_info)」などで9月12日、発売日が10月16日(木)であることがすでに最新作のタイトルが11年前に予告されていた『接物語』であることや、表紙のビジュアルが発表されていた。同公式Xなどは9月16日に更新した情報で『〈物語〉シリーズ』の重要な役柄である今作の「語り手」が『忍野メメ』であることと”物語のあらすじ”を解禁した。

11年の時を経て刊行が正式発表された『接物語』
最新作となる『接物語』の作品タイトルは2014年時点においてすでに発表されていたものである。2014年といえば、〈物語〉シリーズ・ファイナルシーズンの『続・終物語』が同年9月18日に発売されている。つまり、本当の終わりの物語として一種の「ファンサービス」や「裏面」といった側面を持つ作品が発売されていた。なお、『続・終物語』は2019年5月~6月に全6話でアニメ化が行われている。本当の終わりであるはずの『続・終物語』の最後に添えられた次の言葉がこの『接物語』である。
”さよならは、言わない。<物語>シリーズ、ネクストシーズン『接物語』
『続・終物語』より
See you later,alligator.
しかし”ネクストシーズン”の『接物語』が刊行されることはなく”オフシーズン”の4巻、”モンスターシーズン”の6巻、”ファミリーシーズン”の1巻が先行して刊行されていた。ついに、”ネクストシーズン”が刊行されることになる。
『接物語』が指す意味とは
「西尾維新公式情報(@NISIOISIN_info)」や講談社の公式プレスリリースによる『接物語』とは以下のようなあらすじのようである。
境都(さかいみやこ)大学オカルト研究会に所属する忍野メメと貝木泥舟は、先輩にして元締め・臥煙伊豆湖から禁忌の儀式に誘われる。
女子高生の影縫余弦と共に奔走するが、プロジェクトは思わぬ方向へ──!“100パーセント趣味で書かれた誕生秘話。──西尾維新”
株式会社講談社公式プレスリリースより引用
既に『接物語』の表紙ビジュアルが公開されている通り、式神童女である『斧乃木余接(おののき・よつぎ)』の誕生秘話として語られる物語である。
ここからはBunkaCast編集部の見解を含むのでその点についてご留意をいただきたい。〈物語〉シリーズ新作長編の『接物語』の“接”が指す意味は『斧乃木余接』の“接”であり、〈物語〉シリーズの中でたびたび触れられてきた『斧乃木余接』が誕生した経緯の中では禁忌の儀式に携わった人物がそれぞれ呪いを受けていることが明かされている。つまり“接”とは禁忌の儀式のことも指している可能性が高い。
『接物語』は刊行前のため予想を含むことは留意が必要であるが、公式プレスリリースでここまで禁忌の儀式であることや表紙に描かれた『斧乃木余接』の背景は儀式関連に触れられていることを想起させる。しかし、〈物語〉シリーズは読者の予想を良い意味で毎回上回る驚きを与えてきたためミスリードも否定はできない。『接物語』の作品全体は『斧乃木余接』の誕生秘話であっても”接”が意味する本当の意味は違う可能性もある。〈物語〉シリーズでは、語り手の選択が物語構造の鍵になる例が繰り返し見られる。
『恋物語』はその典型で、作中の示唆から読者は「戦場ヶ原ひたぎ(あるいは阿良々木暦)」の語りを想像し得たが、実際の語り手は貝木泥舟であった。語り手が貝木に置き換わることで、物語の焦点は「当事者の恋」から「外部の詐欺師による介入と調停」に重心が移り、
- 戦場ヶ原ひたぎ×阿良々木暦
- 戦場ヶ原ひたぎ×貝木泥舟
- 千石撫子×阿良々木暦(および戦場ヶ原)
- 千石撫子×貝木泥舟(欺く/救うの二面)
といった複数の“恋”の相関が、ひとつの一人称レンズで再配置されます。『接物語』では語り手が忍野メメと公表されている。シリーズ文法上、語り手が誰かは物語の解像度や情報の偏り方に影響し得るため、まずはこの視点設定がどの範囲を照らすかに注目したいところだ。単純に”恋”という言葉でも様々な意味合いがあることを読者に伝えた作品であった。
事前の考察だけではなく実際に読むことに価値がある
9月16日に公開された『接物語』の具体的なあらすじや”語り手”について本記事においてこれ以上直接の作品内容について言及することは避けたい。未発表作品であるからであるならば発売後に実際に読んでもらうことに価値がある。
つまり謎を謎のままに考察を伸ばすよりも新作長編である『接物語』に全て先入観にとらわれずに読んだ方がより楽しめる。BunkaCast編集部としてもこの姿勢を保ちたい。
西尾維新が11年前に残した作品タイトル予告を回収したことについて
ここからは『接物語』という作品タイトルが発表された2014年当時のことを思い返したい。先ほどの引用の通り「さよならは、言わない」ことが予告には添えられていた。
この言葉の意味について発売当初、多くの議論がなされたことを記憶している人も一定数存在すると考える。当時は『接物語』という作品タイトルに添えられた「さよならは、言わない」や「See you later,alligator」の解釈をめぐって議論がインターネット上のコミュニティなどで行われていた。
この解釈の争点は『続・終物語』の終わりに添えられたこの言葉をそのままの意味で受け取るか否かである。この言葉をそのままの意味で受け取ることもできるし、異なる意味で受け取ることもできる。
なぜなら作者の西尾維新氏は言葉遊びが特徴であり、時に過剰であるとされることもある。そんな西尾維新氏が残したこの予告の言葉の裏に隠された意味を探ろうとするファンなどの存在があった。
「さよならは、言わない」、「See you later,alligator」という言葉に西尾維新氏が何を込めていたのか、ついに解き明かされる時が近づいてきたのであろう。
BunkaCast編集部も言葉の意味が解き明かされることを期待して待ちたい。
引用情報について
本記事は公式プレスリリースなどを参考、引用しBunkaCast編集部が独自に再構成したものです。
※画像は公式プレスリリースなどで公開されているものを引用しています。